京極夏彦さんの小説「書楼弔堂 炎昼」を読了。

書楼弔堂 炎昼

明治時代の東京。まるで灯台のような、櫓のような3階建ての書店「弔堂(とむらいどう)」。蝋燭と天窓から差すわずかな外光のみの薄暗い空間に並ぶ数多のありとあらゆる古書や錦絵が、必要とする人の手に渡ることで弔われる日を待っている。そんな本屋を訪れる客たちの物語「書楼弔堂」の第2作。前作“破暁”では元・旗本の男、高遠の視点で語られていたが、今作では元・薩摩藩の武家の孫娘、塔子が主人公。女性とはかくあるべきという厳格な家風により読書を禁じられてきた塔子は、ある日ひょんなことから弔堂を訪れる。そしてそこを訪れる客たちの懊悩に触れ、あるいは本を読む楽しさを知ることを通して自分自身や家族、あるいは世界を見つめなおす。訪れる客は著名な政治家や作家などざまざまだが、業績や作品しか一般的には知られない人々の生々しい悩みや迷いが巧みに描かれており、フィクション世界に違和感なくそれらの偉人たちが存在している。特に前作で弔堂を訪れていた勝海舟の再登場は嬉しい。また、各短編には必ずある花が登場し、そのイラストが各話に挿入されている。その構図やタッチがどことなく植物図鑑のようだと思ったら、本当に「牧野日本植物図鑑」のものだった。

さて、「百鬼夜行シリーズ」や「巷説百物語シリーズ」との繋がりが示唆されるシーンが前作であっただけに今作でもあると予想していたが、雷鳥の絵を店主の“信州に住む知人”が描いたという箇所で、あの白樺湖のほとりに棲む由良伯爵が連想されたくらい。他は気づかなかった。ちょっと拍子抜けしたが、今後の展開も楽しみ。第3巻ではまた主人公が変わるのか、それとも塔子のままか、その辺りも気になる。

   

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