「陰陽師」シリーズの文庫版新刊「蒼猴ノ巻」。6月に発売されていたのに気付かず買い逃していた。なってこったと購入し読了。

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今巻は10話の短編からなる。

「鬼市」は正直パッとしない。異形のモノの市で或ることをしなかったために鬼たちに追われ、晴明に助けられる・・・というだけ。

「役君の橋」はわずか12ページの作品だが、味わい深い。「ゆくか」「いや、ゆ、ゆけぬ」も良い(笑)。とある集落の丸木橋の秘密とは?

「からくり道士」は以前の巻にあった金色のコガネムシの話とモチーフが少し被るが昆虫好きとしては嬉しい(笑)。露子姫と道満が登場。

「蛇の道行」は赴任地から都へ戻る道中ずっと蛇に後をつけられた話だが、最後の晴明のためらいや「これで、よかったのかな」には今一つ共感ができなかった。「これで、よかったのかな」は博雅に言わせた方が良かったのではないか。

「月の路」には蝉丸が登場。弁財天は女性だというイメージがある(元はヒンドゥー教の女神だから間違ってはいないはず。「聖☆おにいさん」でも女性だし(笑))ので「んん?」と思ってしまった展開の話。仏には性別が無いということで、この弁才天もそういうことなのだろうか。あるいは同性愛なのか。話の展開自体は過去作に似たようなのがあった気もする。弁財天がなぜ琵琶を持つようになったか、という話。

「蝦蟇念仏」は「月の路」の後日譚でもある話。こういうのは珍しい。表紙のイラストはこの2話に基づくから、メインディッシュ的な位置づけだろうか。ただ話自体はイマイチ。頭の良いものなら話を聞くだけで失せ物の在処が分かる・・・というのは少し無理があるような。蒼猿が今後も登場するようなフラグが最後に立ったが、魅力的とは言い難いキャラなのでもう出なくていい。ところで、蒼猿といえば小野不由美さんの「十二国記 月の影 影の海」を連想してしまった。

「仙桃奇譚」道満が主人公で晴明や博雅は登場しない。前巻にもあった趣向で、甘味の合間の塩昆布のような味わい。桜の洞の中に落ちていた桃の実の正体は・・・まあ、タイトルにある通りなのだが。

「安達原」といえば旅人を殺して食う鬼婆だ。それの新解釈ともいえる話。今巻で一番良かった。「ああ、愛しい。ああ、食べたい」という鬼婆の心理描写が素晴らしい。

「首をかたむける女」は博雅が主人公で晴明は登場しない。新しい趣向だが、内容はシンプル過ぎやしないか。そして博雅の笛の音の対価が一輪の椿の花というのは安すぎないか?

最後の「舟」。魚を市で売って暮らしを立てている人間が、銭に触れたことがなく二三度見たことがあるだけというのは解せないが、この時代は物々交換が主流だったということか?とすると「鬼市」と矛盾するような・・・。ただ終盤の光景は頭に思い浮かべると趣きがある。

マンネリというか、展開が読める話の割合が多くなってきたように思う。ただ安心して読めるともいえ、諸刃の剣か。また新し試みも感じられ、今後も楽しみではある。今後も新刊が出る度に買うことは間違いなかろう。



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