前々回の続き。道東の旅の模様第5回。

茅沼の駅舎の中で1個目の五目いなりを食べ終え、2個目に取り掛かろうとしたその時、外からタンチョウの鳴き声が聞こえた。まさかと思いホームへ飛び出すと、タンチョウが2羽いるのが遠目に見えた。慌てて五目いなりをカバンにしまい、一眼レフに望遠レンズを装着してホームの釧路方向の端へ撮影に向かう。

タンチョウ@茅沼駅

タンチョウ@茅沼駅

見れないものと諦めていただけに感激もひとしお。テレビや写真とは全く違う存在感に驚いた。鳥という感じがあまりせず、「野生動物」と表現した方がしっくりくる感じだ。少し遠いのと、障害物や積雪の影に隠れてしまってなかなかシャッターチャンスは無かったが、それでも夢中で時間を忘れてシャッターを切った。

さて、茅沼駅というと6年半前に通りかかった際に印象深かったのが、線路際に立つ「タンチョウはSLが嫌いです」と書かれた看板で、そのときは気動車に乗っていたが、乗客としてはあまり良い気がしなかったものだ。その看板は健在で、ただ文言は記憶と微妙に違って「タンチョウも私もSLの煙は大嫌い」だった。

タンチョウ@茅沼駅

なんでこんな看板を立てたのかずっと疑問だった。SLの廃止を求めているのだとしても、乗客に訴えたところで意味は無いだろうに。そんなことを思いつつ撮影しているところに、1人の男性が現れた。腕に腕章をつけている。タンチョウの餌付けをしている方のようだ。もしかすると看板を立てた本人かもしれない。

「タンチョウ見に来たの?それともSL?」と問われたので、「両方です。」と答えると、アチャーというような表情をされた。「やっぱりタンチョウはSL嫌いですか?」と尋ねると、「当たり前でしょう!(笑)」と仰る。やはりSLが嫌いらしい。ところが、さらにお話を伺うとそう単純なものでもなく、SLの機械的な魅力や産業遺産的な価値についても語って下さった。そしてタンチョウやこの方も含めた近隣住民が迷惑しているのは「煙」であると。茅沼駅周辺は平坦なのだから、本来は盛大に煙を吹かす必要が無いはず。にもかかわらず、撮り鉄へのサービスのためか黒煙を盛大に噴き上げることがよくあるらしい。この日の私が乗れなかった標茶行きでもそうしたことがあって、それでタンチョウが逃げてしまったと。「雪原の向こう側にカメラマンが結構いたから機関士に頼んだのかもしれんねえ」と仰っていた。どうやらあの看板は機関士へ向けた「煙を吹かさないで」というメッセージであったらしい。「そもそも昔はSLが普通に走っていたのだし」「SLをハイブリッドにして、沿線住民がいるところは煙を吐かずに走らせられないかなあ(笑)」とも。SL列車が走ること自体は反対ではないようで、「来シーズンも走らすらしいよ」と仰る顔は少し嬉しそうだった。看板を見るだけでは決して分らない沿線住民の声だ。

その方と楽しく話すうちに、2羽のタンチョウが同時に空を見上げて鳴き始めた。生で聴く鳴き声がまた素晴らしい。

タンチョウ@茅沼駅

タンチョウ@茅沼駅

近くを飛ぶタンチョウに呼びかけているらしい。「ほら、あそこ!」と背後の林の上空を指さされた。と、枝間に翼を広げたタンチョウが見えた。慌てて望遠レンズを向けるがピントが合わない。諦めて肉眼で見ることにする。林を抜けてホームの上空に現れたタンチョウ。蒼穹に白い翼が映え、それはそれは美しかった。写真に撮れなかったのは残念だが、この光景を見れただけでも北海道に来たかいがあったと思う。「スーパーおおぞら」乗車時の家へ帰りたい気分はどこかへ消し飛んでいた。風邪の不快感まで忘れてしまっていたのだから、タンチョウの魅力、恐るべし。「一日中見てても飽きない」と言われたが、納得だ。

あっという間に時間は過ぎ、乗り込む「SL冬の湿原号」の来る時間になってしまった。「なってしまった」というのはもうSLなんてどうでもよくなっていたからだが、せっかく指定席を取ったのだし、乗ることにする。後ろ髪引かれる思いで14:19発。

SL冬の湿原号@茅沼駅

発車した車内からは飛び去るタンチョウの姿が見えた。また煙を吹いたのかもしれない。

自分の席に向かうとそこはダルマストーブの傍で、ストーブの上ではスルメが焼かれていた。車内中スルメの香り。津軽鉄道のストーブ列車の真似なのかはわからないが、SL列車にこういう趣向は必要だろうか?

SL冬の湿原号

乗り込んで思い出した風の不快感も合わさって長居したくなくなり、スルメの香りが届かないカフェスペースへ避難する。そして窓外を見つつ思うのは先程のタンチョウの姿。このまま予定通り釧路湿原駅まで行くと、茅沼での夕暮れとタンチョウのコラボは見ることができない。展望台から見る冬の釧路湿原の風景はそんなに魅力的だろうか?そして長居したくないこの列車。茅沼の隣の塘路駅では対抗列車と交換をする・・・。

塘路着14:32、SLを乗り捨てる。今日はタンチョウと過ごそう。そう決めた。

SL冬の湿原号@塘路駅

SL冬の湿原号@塘路駅

塘路14:38発の普通列車に乗車。茅沼駅へと戻る。

塘路駅

~つづく~

※2016年2月19日、OLYMPUS E-620 + ZUIKO DIGITAL ED 70-300mm F4.0-5.6(6枚目はED 12-60mm F2.8-4.0 SWD、7~10枚目はOLYMPUS STYLUS TG-4 Tough)。



3月に入ったのでテンプレートを通常仕様へ。

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