京都府城陽市のプラネタリウムへ先月行った際、番組間の待ち時間が結構あることが分かっていたので、時間つぶしに良い場所は無いかと事前に調べる中で見つけたのが「夜叉婆さん伝説」。京都新聞のサイトで知ったが、引用すると概略は以下のようなものだ。

「花嫁行列だけは決して通ってはならぬ」と周辺の旧家が言い伝えてきた辻が、城陽市寺田の旧大和街道にある。

昔、寺田村の庄屋に娘がいた。たびたび嫁いだが不縁になり、実家に戻ってきた。人々はやがて娘を「夜叉」と呼んだ。のちに、娘は観音堂の堂守となり、ついにそこで亡くなった。娘の塚の前を嫁入り行列が通ると夜叉が不縁にするといい、以後、一度も行列が通ることはなかった。


これだけだと単に男運が無かった女性の悲話とも思えてしまうが、一説には13回も嫁いでは離縁されたというのだから尋常ではない。辻の傍には玉池という池があり、娘は水面に映る夜叉の姿の自分を見て身を投げて死んだという異説もある。なお、離縁の理由は「歩いていて夫を追い抜いた」など当時の女性としては非常識な振舞いをしたからともいい、男運が無いというより、時代に合わなかった女性の悲劇という側面が強いらしい。

そんな伝説ゆかりの地がいくつかあって、民話や伝説が好きな私としてはそれらを巡るのが良い時間調整になりそうだった。

まずは玉池と嫁入り行列が避けるという辻へ。玉池は辻の南東角にあり、四角くコンクリート護岸され噴水まであって、全く伝説ゆかりの地らしい趣きは感じられない。もっとも観音堂の堂守として一生を終えたのなら、もともと伝説に関係は無いのだが。

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲玉池/向こう岸が水度神社参道で右側が神社方向、左奥が嫁入り行列が避ける四つ辻

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲玉池/辻から撮影

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲玉池/なんとかそれらしい雰囲気を醸せないかと試行錯誤

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲辻から水度神社参道が始まる

次に「夜叉ばあさんのムクノキ」。辻から数十メートルほど参道を神社へ進むと左手にある。伝説の中に登場するわけではないが、幹のコブが老婆の顔に見えるというので、平成の初め頃に名付けられたらしい。老婆というからには観音堂の堂守として一生を終えた説を踏まえたものだろう。たしかに車道側から見ると老婆の横顔に見えなくもない。

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲夜叉ばあさんのムクノキ/老婆の横顔に見えるコブ

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲夜叉ばあさんのムクノキ/コブを正面から見ると全く顔に見えない

最後に娘の墓だという夜叉塚。かつては辻の傍にあったのが、今は辻から南東へ200メートルほどの寺田墓地内休憩所傍に移されているという。行ってみるとそれらしき石塔が。ただ解説板等は無く、確証が持てない。

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲寺田墓地入り口

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲墓地の休憩所。左奥に石塔が見える

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲夜叉塚と思しき石塔

お墓参りにやって来た地元の方に尋ねてみたが、最初の1人は夜叉塚など知らないと言い、2人目も知らず、しかもこの石塔は元々ここにあった灯籠が倒壊したものだと仰る。なんてことだ。これは夜叉塚ではないのだろうか。しかし墓地内には他に塚らしいものは無く、ネット上にはこの石塔を夜叉塚として載せているページもありで、釈然としないまま墓地を後にした。

プラネタリウムのある文化パルク城陽へ戻ってきたが、まだ少し時間がある。建物内のプラネタリウムの向かいには図書館と郷土資料館を兼ねたような施設があり、試しにカウンターで「夜叉婆さん伝説の資料はありますか?」と尋ねてみた。気軽に訊いたのだが、大変恐縮なことに職員の方が次から次へと手に資料を持って出てきてくださった(汗)。夜叉塚をご存知な方はいらっしゃらなかったが、その資料の中には観音堂にあった石塔を墓地へ移したという記述もあって、あの石塔が夜叉塚だとみて良さそうではある(書名は確認しなかったが、こちらのページと同様だったので「城陽町史」だったかもしれない)。それを示す文献があると分かっただけでも十分だ。どうもありがとうございました。

ただ、一方で「夜叉塚は玉池の中に移された」という話もあって、実際、京都新聞のサイトやこちらのページの玉池の写真には、今の池には無い小さな祠らしきものが写っている(水鳥用の東屋かもしれないが)。観音堂の夜叉塚に建っていた石塔は墓地へ移され、祀られていたものというか夜叉婆さんを弔う意味で玉池の中に祠が作られたということか。だからどちらも夜叉塚ではあるのだろう。ただし、先述のように今の玉池には祠は無く、それがどうなったかは謎だ。辻にある小さな祠がそれという可能性もなくはないが。

夜叉婆さん伝説@京都府城陽市寺田
▲辻にある小さな祠。伝説との関連は不明だが、単なる交通安全のお地蔵さんかもしれない

ちなみに観音堂についてはこちらのページの内容が興味深い。精神科医の方が講演用に準備した資料らしいが、出典は不明。

※写真は2015年12月5日、OLYMPUS STYLUS TG-4 Tough。

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