姫神がプラネタリウムでコンサートをするという。前代未聞だ。場所は岐阜市科学館。日帰り圏内だしぜひ行きたい。しかし、チケットは1か月前から現地でのみ販売な上に200席しかない。入手は絶望的かと思われた。加えて公演日に予定が入ってしまった。なんたることか・・・まさに断腸の思いで諦めた。

が、そこから事態は急展開する。まず入っていた予定がなんと「当日の天気が悪そう」という理由でキャンセルされた。残る問題はチケットだが、こちらもひょんなことから前日になって確保できた。不思議なくらいコンサートへの道が開けていく感じで、こんな経験は初めてだ。

2015年5月31日、三ノ宮駅から9:05発の新快速に乗車。その後、米原、大垣で乗り継ぎ、西岐阜11:49着。そこから岐阜市科学館へは徒歩15分ということだったが、ウッカリ遠回りしてしまい、20分ほど歩いて12:13到着。

岐阜市科学館

岐阜市科学館(KAGAYAさんのCG展)

入り口ホールではKAGAYAさんのCG展が開催されていた。開演まではまだ3時間以上ある。とりあえず館内を見学。さすがは岐阜というべきか、ギフチョウの展示が充実しているのが特徴的で面白い。願わくばもっと身近な昆虫の展示を増やして子供たちの目を自然へと向けさせてほしいものだ。そうすると科学館というよりは昆虫館になってしまいそうだが。

小一時間見てまわった後、いったん外へ出て昼食を食べ、岐阜市科学館へ帰還。すると姫神コンサートのチケット完売の案内が出ていた。ファンとしてとても嬉しい。

姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館

再び館内を見てまわりつつ15:15の開場を待つが、なんとまだ1時間以上ある段階で良い席を求めて並んでいる人がいた。いくらなんでも早かろうと思う間にも列は伸びてゆく。こういうのを見ると何となく自分も並ばないといけない気がして私も40分前くらいに列に加わる。その後も列は加速度的に伸び、15分前の段階ではもうコンサートを聴く全員が並んでいると思われた。客層はプラネタリウムという事もあってか、あるいはKAGAYAさんのファンなのか、これまで行ったコンサートに比べて女性の姿が目立つ気がする。それにしてもプラネタリウムコンサートでの良い席とはどの辺だろう?そんなことを考えるうちに、開場5分前になって1枚の黄色い紙が配られた。

姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館

なんとプログラム。どんな曲が演奏されるのか分からないまま「おお、この曲か!」と驚きと共に聴くのが楽しみの1つだと個人的には思っているのだが、盛大にネタバレされてしまった。とはいえ、昨秋の上海公演でも先にプログラムが配られたようだし、奉納演奏や野外コンサートを除けばこれが本来の形なのかもしれない。曲目を見るとプラネタリウム番組の使用曲でないものも含まれているのが意外だった。

定刻になりプラネタリウム内へ。満席のため奥から詰めるよう案内され、じっくりと座席を選択するわけにはいかない。後方の方が良い気がしていたが、いざ会場を見てみると中程の方が良いような気がして、とっさに前半部最後列の投影機の傍に陣取る。ちょうど正面にシンセサイザー。そしてふと投影機を挟んで反対側を見るとKAGAYAさんが座っていた。「天空への旅」が流れる中、非常口などの説明の後、暗転。姫神プラネタリウムコンサートが開幕した。

姫神プラネタリウムコンサート岐阜市科学館

姫神プラネタリウムコンサート岐阜市科学館

~姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館~

2015年5月31日(日) 15:15開場 15:30開演

01.序
暗転してほどなくワーンという感じのシンセサイザーの音が流れ始めた。このコンサート用の「序」で、アルバム『シード』(1999年)収録の同名曲とは別物だ。雰囲気はアルバム『東日流』(1994年)の「海の刻」の後半部に少し似ている。しばらくして右手から星さんが登場し、シンセの前で一礼。スポットライトが当たる。そして風の音が流れ・・・。

02.雲海
ノリの良いリズムが始まる。プラネタリウム番組『富士の星暦』の使用曲だ。ドームには星空・・・ではなく、なんと上海公演の映像が映し出された。といっても単純なコンサート映像ではなく、姫神のロゴと交錯するような、前日に星さんがフェイスブックで公開していたのと同様のもので、時折、ロゴがずらりと並んだ画像や、それがチューブ状になって中を進んでいくような映像、あるいは合わせ鏡に映したような画像なども挟まれていた。全天周映像ではなく、単純にプロジェクターで四角い映像をドームに投影したものだったが、生演奏の上空で同じ曲の別のコンサート映像が流れているというのはなんとも不思議な感じで、また星さんのソロ演奏なのに映像には山口太鼓の方たちもいるので、上を見ながら曲を聴くとこの場に山口太鼓の方がいるような錯覚も覚える。心なしかバックトラックもサントラと比べて厚みがあるような気もする。

曲後に最初のMC。岐阜県と東北・岩手の繋がりについて。900年前の奥州藤原氏の時代に、平泉から「上村十二人衆」によって仏像が岐阜の石徹白(いとしろ)へと奉納するために運ばれてきた。しかし運んできたところで平泉は源頼朝によって攻め滅ぼされ、故郷を失った十二人衆は仏像を守りながらこの土地に住み着くことに決め、現在もその子孫の方々が仏像を守り続けているという。その話の流れで、2年後に岐阜の山のふもとで演奏・・・というようなこともおっしゃっていたが、もしかすると先代がコンサートをした白鳥町の長滝白山神社での演奏計画があるのだろうか。続報を楽しみに待ちたい。

03.空の遠くの白い火
アルバム『姫神』(1982年)より。おそらく曲名は宮沢賢治の童話「水仙月の四日」に由来し、イーハトーヴォの雰囲気が漂う姫神の初期の名曲だ。ドームにはまず、低い位置に田園風景の絵が投影された。中央には1本の樹がそびえている。その上空は青みがかって薄明るいだけで特に映像は投影されていない。と、右手の空が赤みを帯び始め、全体が暗くなっていく。そして待望の星が現れた。星は徐々に数を増し、星が線で結ばれて「さそり座」という文字が・・・。あ、あれ。これってたぶん、普段の星空解説で使われている星空じゃなかろうか。ちょっと拍子抜けした。しかし、姫神の生演奏を聴きながら星空解説を見るというのはある意味贅沢だろう。

04.天の川
プラネタリウム番組『~花鳥風月~ 星ごよみ』使用曲。2013年にサントラが発売された。ドームには天の川が投影されたが、無数の星の集まりとしてではなく、ぼんやりと白い靄のような天の川。先ほどの星空の星の数といい、また色が白一色のことといい、どうも小さい頃に見たプラネタリウムと同じような、昔ながらの、という雰囲気だ。プラネタリウムに関しては全くの無知だが、テレビで大平さんの「メガスター」が紹介されるのを見たりするにつけ、最近のプラネタリウムの星空は凄いというイメージがあった。当然実際にはそうした新しい機器を完備した所の方が少数派なのだろうが、正直少し物足りない。加えて、実は姫神はこの前日に三重県でクローズドのプラネタリウムコンサートを開催しており、その際の写真がフェイスブックで公開されていたのだが、ものすごい数の星が写っていた。それを見てから来てしまったのも先入観を強めることになって失敗だったかもしれない。

ここでMC。先ほど写真を見せるのを忘れてました、ということで、天の川が上空に浮かぶ姫神の田瀬湖畔スタジオの写真(撮影KAGAYAさん)が投影された。続いて、今年公開が始まった『オーロラの調べ』の楽曲制作風景も。スタジオ内の写真がドームに投影されると、まるで自分もスタジオ内にいるような感じがして面白かった。

続いて、「もしかしてシンセを弾いてないんじゃないか」疑惑解消のコーナー(笑)。「弾いてると思う人」「思わない人」の問いに観客は挙手で答える。だいたい半々くらいだったろうか。なお、見逃したがツイッターの噂ではKAGAYAさんは後者に手を挙げていたらしい(笑)。そして、後者に手を挙げた人の中から最前列に座っていた女性客2人が壇上に呼ばれ、実際にシンセの鍵盤と音程を変えるピッチベンドを触り、音が鳴るかどうか試してもらう。かなり羨ましい。その後星さんが「納得して頂けましたか?」と2人に尋ね「はい」という回答を強引に・・・もとい、お2人にはご納得して頂けたようでなによりだった(笑)。
※実際には2人の内の1人のオバちゃんの怖いものなし発言を星さんが上手く切り返したり、あるいは星さんのぶっちゃけトークもあったりしたのだが、紹介して良いものか際どいので自重(汗)。

05.雲わたる月
プラネタリウム番組『~花鳥風月~ 星ごよみ』使用曲。ドームには左手の方から昇ってきて星空を進む黄色い月。ウサギの餅つき模様もくっきりしておりなかなか美しい。そして正面中程には、中秋の名月の解説文。やはりこれも普段の解説に使われているのだろう。今年の何月何日が中秋の名月で、岐阜の月の出は何時で、文化的にどういう意味があるのか、といったことが紹介されていた。この日一番、曲と、このプラネタリウムの空とがかみ合っていたように思う。

06.あの空の下に
アルバム『千年回廊』(2000年)収録。近年はコンサートのラストナンバーになることが多い定番曲だが、今日は中盤で。ドームには星空が投影され、それが徐々に明るくなって星が消えてゆき、薄明るい青い空へ。そして左手の方だけ赤みを帯び、そこから白い円が空へと昇ってゆく。日の出だ。どちらかというと夕暮れのイメージがあったこの曲だが、夜明けも悪くない。特に最後の盛り上がり部分が明るくなる空とマッチしていた。

MC。「プログラム上は残り3曲となりました」と、「プログラム上」を強調されるので、これはこの後も演奏が続くのだなと(笑)。まあ、アンコール曲があるのはお約束ではある。

07.希望の花
一昨年に静岡県で開催された『ふくろい遠州の花火2013』でのスターマイン用に作られた未CD化曲で『富士の星暦』でも使用されている。一昨年の白山一里野音楽祭で、間奏が山口太鼓の佐々木さんによるソロ演奏になっているバージョンは聴いたことがあったが、通常版(?)は今回初めてだった。注目の間奏部分だが、勘違いかもしれないがバックトラックに声明か般若心経らしきものが織り込まれているように聞こえてビックリ。お経が織り込まれた姫神の楽曲はこれまで暗めの雰囲気のものがほとんどだったが、この曲はノリが良くて明るく、そういう意味では異色作といえる。なお、この曲の演奏中のドームには何も投影されなかったと記憶している。ただほの暗いだけで、ちょっともったいない感じがした。

08.火焔
昨年の第62回伊勢神宮奉納全国花火大会でのスターマインで使用された未CD化曲。ここ数年、姫神はこの花火大会に曲を提供するのが恒例となっており、星さんは審査員としても参加している。曲単独で聴いても夏の夜空と花火の情景が浮かび、スターマインに提供された曲の中では3年前の「閃光」と並んで好きな曲だ。生演奏を聴くのは今回が初めてで嬉しい。ドームにはその昨年のスターマインの映像が投影された。まるで宮川の岸辺で花火を見ているようではあったが、願わくばもっと大きく投影されていればより臨場感があったろうと思う。

09.花鳥風月
プラネタリウム番組『~花鳥風月~ 星ごよみ』テーマ曲。生演奏を聴くのはこれまた初めて。ドームには星空を背景に地球を出発し、惑星の傍をすり抜けながら太陽系の外へ、そして天の川銀河の外へ向けて飛んでいく視点での映像が映し出され、小惑星帯を抜けるところなどは浮遊感とスリルがあってとても良かったが、心なしかピンボケして見えたのが残念だった。天の川銀河を外側から眺めた後は再び地球へと帰還。再び地上から見た星空と、低い位置にはビル群の夜景が映し出された・・・と思うが、夜景は別の曲だったかもしれない。ピンボケはともかく、映像はこの曲のものが一番良かった。

MC。岐阜市科学館の方々の紹介と感謝。普段のプラネタリウムでの投影とは全く違う中での機器の操作や演出はご苦労も多かったのではないかと思う。客席からは盛大な拍手。そして、プログラム上はこれで終わりですが(笑)、もう1曲。

10.浄土悠遠
平泉が世界遺産登録を目指していた2008年にテーマ曲として作られた。未CD化ながら近年のコンサートでは必ず演奏されると言って良い定番曲。鐘や鈴の音が織り込まれた重厚な曲だ。ドームには彗星の映像が映し出された。彗星にぐんぐん近づき、チリの中を抜け、核の傍をかすめて向こう側へと抜ける。単純な星空よりもこうした動きのある映像の方が面白いし好みだが、あまりこういうのばかりだと疲れたり酔ったりするお客さんが出るかもしれないので良し悪しか。

MC。もう1曲演奏するとのこと。そしてカメラのご準備をと。昨秋の平泉寺白山神社でのコンサートでもあった撮影タイムだ。もしかすると今後恒例になるのだろうか?

11.雪の女神
アルバム『天空への旅〜Himekami TV Omnibus〜』(2013年)より。近年の作品では一番好きな曲だ。ドームには星空と流星(たぶん)、そして向こう側から近づいてきて傍をかすめて飛び去っていく土星(?)が投影された。客席にはデジカメや携帯の液晶の光が並ぶ。そしてカメラの設定が判らない人も中には居て、盛大にフラッシュが焚かれた。星空が消えてしまうから本来は厳禁だし、星さんも演奏しにくかったのではと思うが、まるで稲光の中で演奏しているようで、それがまた曲のイメージにマッチして思いのほか面白かった。私も持って行ったコンデジで撮影したが、成果はイマイチ。「変顔はアップしないでください」とのことだったが(笑)、この写真なら良いだろう。オリオン座と星さんを何とか1枚に収めた。

姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館

演奏後、星さんによりKAGAYAさんが紹介され、壇上へ。そしてKAGAYAさんが挨拶する中、それをiPadで撮影する星さん(笑)。

姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館

さてKAGAYAさんの挨拶だが、プラネタリウム番組を作るにあたって姫神とのコラボが実現した経緯や、製作の進め方について、そしてプラネタリウムコンサートが実現したのは夢のようだとおっしゃっていた。実は『スターリーテイルズ』の完成試写会の際に行う計画があったが、震災で中止されてしまったのだという。また、本来はもう1人この場にいてほしかった方がいるという事で、ORIGAさんが紹介された。今年の初めに亡くなられたが、空の上から笑顔で見てくれていたと思うとのこと。ちょっと声を詰まらせながら述べられていた。

これにてプラネタリウムコンサートは閉幕。演出面では伸びしろが凄く大きそうだし、もっと高画質の星空のもとで演奏を聴いたら・・・など、今後が楽しみな試みだった。ラジオで星さんが述べられていたように「第一歩」という趣だ。

続いてはサイン会。列の途中にはKAGAYAさんの物販ブースがあって、そこで『富士の星暦』のサントラ付きフォトブックを購入。まずはKAGAYAさんにサインして頂いた。握手の際、何か言わねばと思って「『オーロラの調べ』を見るのを楽しみにしてます」と言ったが、もっと事前に練っておくんだったか。でも「ありがとうございます」と笑顔でおっしゃって下さって救われた(笑)。続いて星さん。サインして頂いたのはこれが3回目だが、今回初めて「兵庫県から来ましたErbafです」とハンドルネーム兼ラジオネームを名乗った。どうもどうもという感じで少しお話しさせていただいたのだが、その際星さんから驚きの発言が。はたしてあれは本気だったのだろうか。本当に実現したら凄いというか自信が無いというか・・・。その時は舞い上がっていて冷静に考えられなかったが、振り返るとどっちだろうという感じだ。とりあえず社交辞令だったら恥ずかし過ぎるので内容は秘密にしておこう。

姫神プラネタリウムコンサート@岐阜市科学館

フワフワした気持ちで岐阜市科学館を出て西岐阜駅へ。タイミング良く17:24発の米原行き新快速に乗れた。三ノ宮にはまっすぐ帰れば20時過ぎに着くが、米原駅の北陸本線ホームの立ち食い蕎麦屋が呼んでいる気がする。あの絶品の蕎麦を食べて帰ることにしよう。

東海道本線の車窓の夕景

※写真は2015年5月31日、NIKON COOLPIX L610。

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