白山神楽 姫神演奏会

2014年10月4日、福井県勝山市の平泉寺白山神社の傍で開催された姫神コンサートの模様。

※曲目に13日の岩手県花巻市でのコンサートのネタバレが含まれるかと思いますので、そちらに行かれる方は見ない方が楽しめるかもしれません(笑)。

JR~えちぜん鉄道~コミュニティバスと乗り継いで平泉寺口バス停に降り立った私の目に、衝撃的な文字が飛び込んできた。姫神演奏会の案内板の傍に立つ看板に赤字で「クマ出没注意」。コンサート会場への矢印の傍では、なかなかお目にかからない代物だ。

白山神楽 姫神演奏会

強いて言えば件の看板は矢印が示す右の道ではなく左の道に立っているが、左右の道は細長い森を挟んで平行に伸びているので、おそらくどちらの道にも熊はお出ましになるのだろう。左の道は会場である平泉寺旧境内への正式な参道のようで雰囲気も良さげ。実際、一緒にバスを降りた老夫婦も左の道を行った。しかしこの看板を前にそちらに行く気はしない。自動車の走る右の道の方がいくらかは安全なはずだと判断して右の道を行った。ほどなく、路面に現れた乾いた泥のピースマーク。イノシシの足跡だ。サファリパークを歩いているような気分で会場へと急ぐ。

10分ほど歩くと、彼方からシンセの音がかすかに。さらに5分ほど歩いて会場の傍に建つ白山平泉寺歴史探遊館「まほろば」に着いた。リハーサル中らしく、建物の向こう側の広場から「雪の女神」が聞こえてくる。ほどなく曲は「浄土悠遠」に変わった。ずっと聞いていたい気もするが、本番の曲目をここで知ってしまうのもつまらないし、コンサート前に平泉寺白山神社を見ておきたかったので、リハの音を背に参拝。ある意味とても贅沢なことだ。

参拝後、会場へ戻る途中で参道脇の苔の写真を撮っていたら、「平泉寺白山神社の宮司さんは平泉さんといって、岩手県の平泉にはシラヤマさんという一族がいて」と語りながら社殿の方から降りてくる人が。姫神、星吉紀さんだった。本番前に参拝されていたようだが、いや、驚いたのなんの。で、目の前にいらした時にとっさに口から出たのが「こんにちは」。至極まともな挨拶だが、好きなミュージシャンを前になんとも間が抜けている(笑)。星さんの方も「こんにちは」と返して参道を下って行かれたので、単に参拝者同士が挨拶を交わしたという体に。もっとも演奏直前の方に「コンサート聴きに来ました!」だのなんだの言うのも余計な気がするので、これで良かったのかもしれないが。

さて、気を取り直して会場へ。ブルーシートが一面に敷かれていて、靴を脱いで各々が思い思いの場所に陣取るシステム(靴は受付でもらったビニール袋に入れる)。せっかくなので最前列を確保。シンセが間近に見える。会場にはアルバム『風の伝説』が流されていて、それを聴きつつ開演を待つ。

白山神楽 姫神演奏会

白山神楽 姫神演奏会

開演5分前にはブルーシート上は観客でいっぱいになった。ファンとして大変嬉しい。定刻16:00、いよいよ開演・・・と思いきや、勝山市長の挨拶。姫神と白山三馬場(白山信仰の3つの拠点。石川県の白山比咩神社、岐阜県の長滝白山神社、そしてここ福井県の平泉寺白山神社)の縁などを詳しく説明。内容はとても良いのだが、進行役の方も含め姫神を「ひめみ」と発音するのはいただけない。心の中で小さくブーイング(笑)。正しくは「ひめみ」です。

市長さんの挨拶の後、いよいよ姫神・星吉紀さん登場。いつもの白いコンサート衣装をまとった姿でシンセの傍へ来て一礼し、コンサートの幕が上がった。

【白山神楽 姫神演奏会】

2014年10月4日(土)
福井県勝山市 白山平泉寺歴史探遊館まほろば 西側 平泉寺敷地

曲目

01.風の祈り
アルバム『炎 -HOMURA-』(1993年)より。姫神の代表曲の1つであり、平泉と縁の深い曲なので、この曲で始まるんじゃないかと薄々思っていた。演奏を聴くのは3年前の京都・平安神宮以来で意外と久々だ。荘厳な調べが響き渡る。

02.千年の祈り
アルバム『千年回廊』(2000年)より。近年のコンサートではDJ・ミュージシャンのDAISHI DANCEのアルバム『beatlessBEST...Mellow Relaxation.』(2012年)収録の「千年の祈り(DD 2012 Re_Make)/姫神×DAISHI DANCE」に近いノリノリのアレンジで演奏されていたが、今回は『千年回廊』寄りの、でも聞いたことがないアレンジだった。そしてこれが良かった!曲の前半はリズムパートが無く後半に入る、「山の神」のライヴバージョンを彷彿とさせる趣向で、ぐっと盛り上がっていく感じが最高。涙腺が緩む。また、鈴の音が織り込まれていることで、原曲の中東っぽい雰囲気が少し和のテイストにスライドしている感もある。なお、今回のコンサートは星吉紀さんのシンセだけのソロコンサートなので、姫神ヴォイスのパートはシンセに・・・は置き換わっておらず、録音素材が流されていた。生歌ではないにしろ歌ものが聴けるとは思わなかった。ちなみに演奏中、シンセにトンボ(※)がとまったのには驚いた。星さんは気付いていたのだろうか?
※翅の先が茶色いマユタテアカネのメス?

ここで最初のMC。関係者の皆さん、今日来て下さった皆さんに音返し(おんがえし)できるような演奏をしたい、とのこと。話したかったことが全部市長さんに言われてしまってどうしよう(笑)と思ってますが、先代が亡くなって10年、それを記念した13日のコンサートに今日の演奏で得たエネルギーを持って臨みたい。それで今回、平泉寺白山神社と白山に向かって演奏できると思ったら、目の前に(歴史探遊館まほろばの)大きな瓦屋根が、と(笑)。会場には赤トンボ(マユタテアカネ?)がたくさん飛んでいて、MC中の星さんの肩にとまろうとするものも(笑)。

続いて先代が作った懐かしい曲を、という紹介の後に。

03.行秋
アルバム『奥の細道』(1981年)より。コンサートで聴くのは初めてで、そういう曲を聴けたらとは思っていたが、確かに季節はピッタリだけどもまさかこの曲とは。33年前の1stアルバムからの選曲で、曲の雰囲気もさることながら姫神の歴史という意味でも懐かしい。私の生まれる前にできた曲だが、全く色褪せない名曲。1stアルバムで一番好きな曲なので嬉しい。ただ、演奏されたアレンジのリズムパートはちょっと力強過ぎるというか、いっそ無い方が良いというか(汗)、この曲はもっと静かな雰囲気が似合うと思う。でも聴けて嬉しい。ちなみに13日に岩手県の花巻市でのコンサートでも演奏を予定しているそうで、演奏して良いものかどうか今回白山にお伺いを立てる意味で演奏します、というような曲紹介があった。

04.琥珀伝説
アルバム『マヨヒガ』(1995年)より。これもコンサートで聴くのは初めて。ほぼアルバム通りのアレンジで、二胡のパートは録音素材(バイオリンか馬頭琴かも)が流されていた。

2回目のMC。先代が白山三馬場の内、長滝白山神社と白山比咩神社でコンサートをしていて、子供の頃の夏休みの旅行といえばそれについていくことだった、とのこと。当時はなんでそんな場所で?と思っていたが、平泉との繋がりなど勉強してようやく分るようになった、今回で白山三馬場すべてで演奏したことになり、他にそんな音楽家はいないだろう、皆さんはその歴史的な瞬間に立ち会ったことになります(笑)、といったお話に会場から拍手。

05.白山
アルバム『風土記』(1989年)より。白山といえばこの曲は外せない。一昨年昨年の白山一里野音楽祭でも演奏された。

06.火振り神事
アルバム『ZIPANGU姫神』(1992年)より。演奏を聴くのは5年前の伊勢神宮内宮以来。これまた久々。その時はキラキラしたピアノの音色が織り込まれたアレンジだったが、今回それはかなり抑えられていて、こちらの方が好み。

3回目のMC。主に次に演奏する曲について。

07.大地はほの白く
アルバム『風の伝説』(2004年)より。原曲は福島県いわき市の白水阿弥陀堂でのコンサートで演奏された「白水のテーマ」だという情報をどこかで見た(星さんも白水をテーマにした曲だとおっしゃっていた)。白水阿弥陀堂はその地に嫁いだ奥州藤原氏・藤原清衡の娘が平泉を懐かしんで建立したらしい。「白水」は平泉の「泉」の字を分解したものだともいう。

08.大地炎ゆ
アルバム『北天幻想』(1986年)より。演奏を聴くのは「火振り神事」同様5年ぶり。奥州藤原氏をテーマにした姫神の代表曲の1つ。時刻は17:00頃で、曲の終わりとほぼ同時に夕方のチャイムが鳴った。

4回目のMC。最後2曲は私が作った曲をということだったが、曲名の紹介が無いまま演奏開始(笑)。

09.雪の女神
アルバム『天空への旅〜Himekami TV Omnibus〜』(2013年)より。白山をイメージして作られたらしい。二代・姫神屈指の名曲だと思う。姫神ヴォイスのパートは録音素材が流されていた。

10.浄土悠遠
CD未収録曲。当時世界遺産登録を目指していた岩手県・平泉のイメージ音楽として2008年に製作された。重厚かつ荘厳な曲。姫神ヴォイスのパートは録音素材が流されていた。

演奏後、曲紹介忘れてました、という事で曲名の紹介(笑)。その後、もう1曲だけ演奏してもよろしいでしょうか、と。会場から拍手。この1曲だけは撮影OKということで、皆カメラや携帯を取り出す(ネットでの公開はNG)。星さんもスマホで「ハイ、キムチ」と観客をパチリ(笑)。他にはもう用意をしてないのでアンコールはありませんが、とも。

11.あの空の下に
アルバム『千年回廊』(2000年)より。近年のコンサートの定番曲でラストナンバーに持ってこられることも多い。今回もこの曲で。もしかすると星さんのお気に入りの1曲なのか、とも思う。

万雷の拍手の中、一礼して去る星さん。演奏会終了。後半、隣の小さい子供が帰りたいとゴネてかなり鬱陶しかったが(未就学児は入場お断りの方が良かったと思う)、まあ御愛嬌。素晴らしい演奏会だった。それにしても白山神社参拝中に聞こえていたリハの曲に「天の川」と「雲わたる月」があったような気がするのだが、音のチェック用にリハでだけ演奏したのだろうか?ネタバレになってはいかんと聴くともなしに聴いていたのだが、もっと耳を澄ませておくんだったか(もう1曲聞こえた曲があったが・・・ラストの「あの空の下に」か?)。

客出しの「神々の詩 ブルガリアンヴァージョン」が流れる中、終了後の案内。クマの出没情報が多数あるのでお気をつけてお帰り下さい、と(笑)。

終了後、夕暮れの空に2筋の飛行機雲。

白山神楽 姫神演奏会

撮影後に歴史探遊館「まほろば」の前に戻ってくると、花束を持った星さんが中高年グループに囲まれて撮影大会の様相を呈していた。そこに割って入る勇気?の持ち合わせがなく(笑)、遠巻きに1枚撮っとこうとカメラを構えたら星さんと目が合ったような。なんだか申し訳なかったなと反省しつつ、寒かったこともあって建物の中へ。姫神の楽曲と同じ名を持つこの施設、閉館は17時らしいのだが、「今日は演奏会があったから良いですよ」と施設の方が言って下さって、ありがたく見学させてもらった。

しばらくして外へ出てみると、空は燃えるような夕焼けになっていてビックリ。

白山神楽 姫神演奏会

機材を片付ける星さんを横目にバシバシ撮影。星さんはこの空に気付いていただろうか?赤みはみるみる失われていく。撮り始めた時にはすでにピークを過ぎていた感もあるので、「まほろば」に入らずにジャンパーを羽織って空を見ているのも一興だったかもしれない。

あっという間にすっかり暗くなり、会場傍のバス停(行きのバスのルートには入っていなかった)で帰りの「乗り合いタクシー」なるものを待つ。私以外にもう1人それを待っているらしき人もいるし、来ないはずはないが、万一来ないとナイトサファリウォークをせねばならない(笑)。と、道の向こうにヘッドライト。「来た!」と横の方が声を上げる。やはり私同様心配だったのか。ワゴン車みたいなものかと思いきや、それは立派なマイクロバスだった。これで勝山駅まで戻れるぞとホッと息をつき、会場を後にした。

※写真は2014年10月4日、1・5枚目はNIKON COOLPIX L610、2~4枚目はOLYMPUS E-620 + ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD。

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