京極夏彦さんの小説「数えずの井戸」を読了。

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何年か前に単行本が出た際、半分くらいまで読んで先へ進んでいなかった。今回あらためて最初から読んだが、読みやすいのに妙に読破に時間がかかった。単行本で800ページ弱だが、読み始めてから5週間。ただその間読まなかった日がかなりあり、それを除くと1~2週間ほどか。面白いのに毎日読みたいとは思わない。そういえば前回読んだ際もそれで挫折した。

なぜ読みたいと思わないのかを鑑みるに、この小説は「1枚、2枚、・・・、9枚、1枚足りない・・・」でおなじみの皿屋敷の怪談を題材にしており、ラストが悲劇的な結末になることが目に見えているからというのもあろう。そもそも最初の章で怪談を超える悲惨な最後になることが明示されており、どんな結末かを楽しみに読み進める小説ではなく、そこに至る過程を追う小説なのだ。

今作には又市と徳次郎が登場しており、巷説百物語シリーズの外伝ともいえる。ただこの2人はほとんど「仕掛け」をすることなく、事件に対しては傍観者の立ち位置。後世の皿屋敷の怪談の源が、徳次郎による幻術だったというくらいなので、巷説百物語のような必殺仕事人的な物語ではない。そこが巷説シリーズファンとしては少し残念で、又市の技量をもってすれば怪談を残しつつ菊たちを救う事も出来たのではとも思うが、物語中の又市がまだ若く経験が浅いという事なのかもしれない。

それにしても、菊や三平をはじめ登場人物が作中でする言動や選択が見事に裏目裏目に出て悲劇的な崩壊へと進んでいくのは見事だ。結末はややぼんやりした感はあるが、これはこれで余韻があって良いのかもしれない。単行本では最終章の扉直後にちょっとした仕掛けがあるのにも注目。同じく怪談に材を取った「嗤う伊右衛門」「覘き小平次」に続く名作だった。

          



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