1960年に刊行されたものの復刻版で、当時の科学者たちが40年後の2000年の科学技術を推測し、それによって可能になっているであろうことを分野ごとに書いている本「復刻版 21世紀への階段 40年後の日本の科学技術」。第1部に続き第2部を読了。

21世紀への階段 第1部―40年後の日本の科学技術 復刻版amazon画像リンク作成ツール

第2部は第1部ほど荒唐無稽ではなく、未来予測はそんなに大きく外れてはいない印象。実現しているのは半分くらいだろうか?第1部と合わせると、全体の4割ほどが実現している感がある。

予測が外れているものに関してこの第2部で強く感じたのは、実現しなくて良かった、ということだ。合理的過ぎて無味乾燥な予測であり、もしそんな世の中になっていたら世界は実につまらなかったろう。例えば、農作物に関しては品種改良が進み、耐寒性などを獲得することによってある地方でしか育てられなかった品種が全国で栽培できるようになったりするため、全国的に同じものが育てられるようになり地域間の特性の違いがなくなる、というような予測がされている。繊維素材に関しても石油由来の人工素材の方が天然素材より性能が優れており、ほぼすべて取って代わられるというようなことも書かれていた。

現実には確かに技術そのものは予測通り進歩したが、それによってもたらされる世の中の様子はかなり違ったものになっている。安い輸入食材の影響やグルメ志向もあって各地域ごとの「ブランド」も生まれてかえって農産物・水産物の地域間の差が明確になった。繊維にしても確かに人工素材が幅を利かせてはいるが、天然素材もかつてに比べれば減ったとはいえ取って代わられることなく、両者はそれぞれの良さを生かして共存しているといえよう。技術の進歩によって、それを使うものにとっての選択肢が変わったのではなく増えたといえそうだ。生活は無味乾燥になることなく、より潤いを得た。

他に印象的だったのが、第10章「太陽との平和共存」の文章。読ませる文章、と言えばいいのか、他の章がただ対象を説明するだけの「研究者の文章」なのに対し、この章はサクサク読める心地よさや遊び心がある。章のテーマの実例を見に行く旅の模様が描かれていて、急行「青葉」に乗って著者が上野駅を旅立つ冒頭は宮脇俊三さんの旅行記を思わせる雰囲気があり、おおっと嬉しくなった。車窓の描写もあって読むと旅をしているような気分になる。なお、宮脇俊三さんのデビュー作「時刻表2万キロ」が出版されたのは1978年であり、著者が宮脇さんに影響されたというわけではない。それがまたすごい。できればこの章の著者にこの時代の旅行記を書いてほしかった。おそらく資料的な価値も併せ持った名作になったろう。

第1部・第2部とも内容は大変興味深い。一読の価値ある2冊だ。

    

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