昨日に続き本のレビュー。本日はライトノベル「異世界食堂」シリーズ。現在4巻まで刊行されている。



昨日紹介した『古典部シリーズ』と同じく、ニコ生でアニメを見て原作を読んでみたくなった作品。

とある町の洋食店“ねこや”の扉は、土曜日だけ異世界へと繋がり、そこに住まう様々な客を迎え入れる。人間はもちろん、エルフやリザードマンなど人でないものの姿も。中には神と崇められる存在まで訪れ、異世界には無い料理の数々に舌鼓を打つ。客それぞれが持つドラマが面白いのはもちろんだが、なんといっても料理の描写が素晴らしい。読んでいるとお腹がすいてくる小説は初めてだ。また、普段の食事を食べる時も、より味に意識を集中して(心の中で寸評しながら(笑))食べるようになった気がする。

アニメでは描かれていなかった異世界食堂の扉の仕組みや、その始まりについても触れられているのは原作小説の魅力でもあり、思いのほか世界観に深みがあることに驚いた。1巻当たり20話以上収録されているのもお得感があって良い。これまた続きが楽しみなシリーズ。最近当たりの小説に出会えていなかっただけに、こうして相次いで遭遇できているのは嬉しい。



久々に本の感想。今回は「氷菓」から始まり、最新刊「いまさら翼といわれても」に続くミステリー作品『古典部シリーズ』。



ニコニコ生放送で見たアニメが面白かったので、原作に興味を持って最近読み始めた。ミステリーというと殺人など血なまぐさい事件がつきものだが、このシリーズは(作中作として殺人を題材にしたものは登場するが)そんなものとは無縁。高校の活動内容不明の部活「古典部」の部員が出くわすちょっとした謎を、主人公である折木奉太郎が中心となって解決していくのだが、その解決への道筋がとても気持良い。また、「やらなくてもいいことはやらない。やらなければいけないことは手短に」という奉太郎のモットーはとても共感が持てるし(笑)、ヒロインの千反田えるも含めキャラクターが非常に魅力的だ。

第1作「氷菓」は、小さな謎の解決を積み重ねながら、えるの叔父が言った言葉、文化祭の別名「カンヤ祭」の由来、そして古典部の文集のタイトル「氷菓」の謎に迫っていく作品。最後の謎については分かってみれば・・・というようなものだが、込められた思いがとてつもなく重い。

第2作「愚者のエンドロール」は脚本家が途中で投げ出してしまったミステリー映画の事件の解決に古典部が挑む。意外な犯人の存在によって見事解決したかに見えたのだが・・・。

第3作「クドリャフカの順番」の題材は文化祭で発生した連続盗難事件。わらしべ長者的な展開が面白い。

第4作「遠まわりする雛」と、最新刊である「いまさら翼といわれても」は短編集。いずれもえるに焦点を当てた表題作がとても印象的。奉太郎とえるの関係は今後どうなっていくのだろう。

第5作「ふたりの距離の概算」は、マラソン大会の進行とともに、新入生が古典部入部を辞退した理由が明らかになっていく面白い構成。

まだ完結しておらず、続きがとても待ち遠しい。まだ読んでいないが、昨年10月に刊行された「米澤穂信と古典部」という本に新作短編が載っているらしいので、早く読みたい。



京極夏彦さんの小説「書楼弔堂 炎昼」を読了。

書楼弔堂 炎昼

明治時代の東京。まるで灯台のような、櫓のような3階建ての書店「弔堂(とむらいどう)」。蝋燭と天窓から差すわずかな外光のみの薄暗い空間に並ぶ数多のありとあらゆる古書や錦絵が、必要とする人の手に渡ることで弔われる日を待っている。そんな本屋を訪れる客たちの物語「書楼弔堂」の第2作。前作“破暁”では元・旗本の男、高遠の視点で語られていたが、今作では元・薩摩藩の武家の孫娘、塔子が主人公。女性とはかくあるべきという厳格な家風により読書を禁じられてきた塔子は、ある日ひょんなことから弔堂を訪れる。そしてそこを訪れる客たちの懊悩に触れ、あるいは本を読む楽しさを知ることを通して自分自身や家族、あるいは世界を見つめなおす。訪れる客は著名な政治家や作家などざまざまだが、業績や作品しか一般的には知られない人々の生々しい悩みや迷いが巧みに描かれており、フィクション世界に違和感なくそれらの偉人たちが存在している。特に前作で弔堂を訪れていた勝海舟の再登場は嬉しい。また、各短編には必ずある花が登場し、そのイラストが各話に挿入されている。その構図やタッチがどことなく植物図鑑のようだと思ったら、本当に「牧野日本植物図鑑」のものだった。

さて、「百鬼夜行シリーズ」や「巷説百物語シリーズ」との繋がりが示唆されるシーンが前作であっただけに今作でもあると予想していたが、雷鳥の絵を店主の“信州に住む知人”が描いたという箇所で、あの白樺湖のほとりに棲む由良伯爵が連想されたくらい。他は気づかなかった。ちょっと拍子抜けしたが、今後の展開も楽しみ。第3巻ではまた主人公が変わるのか、それとも塔子のままか、その辺りも気になる。