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3月に入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』について。今回はその内「グスコーブドリの伝記」と「銀河鉄道の夜」の朗読と姫神による音楽について。今回が最終回。

「グスコーブドリの伝記」(10巻A面27:42、B面22:23、11巻A面36:10、B面24:06)
グスコーブドリの伝記~宮沢賢治童話集

10巻A面~11巻B面に収録。原作は未読だったが、宮沢賢治作品にはこんなに重苦しい物語もあるのかと驚き。特に前半は子供受けはしなさそう。一方で後半は今の時代に聴いても未来感があって面白いが、結末は・・・。朗読は角野卓造さん。某「渡る世間~」(あるいは某芸人さんのモノマネ)のイメージが強い方だが、重みのある声が伝記という体際の物語によく合っている。キャラによってあまり声音を変えたりはしていないが、語調や緩急など巧みな演じ分けが見事。

音楽はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「沼ばたけのオリザ」。アルバムより少しテンポが速くキーも高い(テープの回転数のせいかとも思ったが、朗読の声音の感じだとそういうわけでもなさそう)アレンジや、シンフォニックで軽いリズムパートがあるアレンジも。他に未収録曲が4つ。1つ目はハンドベル系の音色で主旋律が奏でられる曲で、星空や澄み渡った空気感が思い起こされるなかなかの良曲だが、残念ながら流れる場面と曲があまり合っていない。特にキーが低いアレンジのものが噴火の場面で使われているのはどうなんだろう。全体的に清々しさからは遠く暗い「グスコーブドリの伝記」よりも、「ポラーノの広場」のような物語によく合いそうな曲だ。2つ目は主旋律が笛の音、バックトラックが低いハンドベル系の音で奏でられるアンビエント調の曲。こちらは少し暗い雰囲気で、天蚕を育てる場面で流れるが、やはりいまひとつ場面と合っていない。昆虫が好きな私だから思うのかもしれないが、むしろ1つ目の主旋律がハンドベルの明るい曲の方が合うような。3つ目は「ポラーノの広場」で流れたアルバム『姫神風土記』の「空と雲と友と」をシンフォニックにしたような未収録曲とよく似ているが、こちらは場面によく合った使い方をされている。4つ目はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「青いくるみ」をシンフォニックにしたような穏やかな雰囲気の曲で、なぜか噴火直前の地震や噴火の緊迫した場面で使われている。例外はあるが全体的にBGMと場面がかみ合っていない印象。

「銀河鉄道の夜」(12巻A面29:36、B面31:47、13巻A面26:44、B面19:29、14巻A面29:25、B面26:23)
銀河鉄道の夜~宮沢賢治童話集

12巻A面~14巻B面に収録。朗読は女優の木内みどりさんだが、朗読というよりは音読に近く、セリフと地の文の差がほぼ無い上に抑揚も乏しい。会話のところなど今誰がしゃべっているのか途中でわからなくなる。滑舌も所々あやしい。この平板な朗読を長時間聴くのはかなりの苦行で、記事を書くにあたってもう一度聞き直したが辛かった。木内さんに何か朗読におけるポリシーがあるのか、依頼サイドが何か間違えたのかわからないが、言わずと知れた宮沢賢治の代表作でありおそらくこの朗読集のメインディッシュでもあろう大トリの朗読がこれというのは、期待していたこともあって非常に残念に思った。

音楽はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「鋼青の空の野原」「ケンタウル祭」「本当のさいわい」(ひと続きの3部構成の1曲として収録)で、アルバムと同様のアレンジの他、「本当のさいわい」はキーが高くテンポが遅いアレンジやクリスタル系の音色による白玉系の変奏曲(あるいはメロディーが似た未収録曲か)も流れる。終盤ジョバンニが目を覚ます直前にはかなり激しいアレンジも。他にパイプオルガンの音色で奏でられ、バックにアルバムでも聞こえるキラキラしたSEが入る白玉系の静かな雰囲気の未収録曲。また、クリスタル系の低い音で演奏され、飛び跳ねるような、雫が零れ落ちて行くようなパンフルート系の音のバックトラックが特徴的なアンビエント調の未収録曲も使用されている。



最後の「銀河鉄道の夜」を除き(汗)、非常にクオリティの高い朗読の数々で、特に「なめとこ山の熊」と「ポラーノの広場」が素晴らしかった。姫神の楽曲も、アルバムの別アレンジや未収録曲を数多く聴けて満足。音楽的には特に「セロ弾きのゴーシュ」が収穫だった。この朗読集、CD化等されず、なかなか聞けない代物となってしまったのが惜しまれる。

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3か月ぶりになってしまったが(汗)、3月に入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』について。今回はその内「ポラーノの広場」と「風の又三郎」の朗読と姫神による音楽について。

「ポラーノの広場」(5巻A面29:19、B面21:47、6巻A面36:13、B面22:24、7巻A面36:10、B面29:20)
ポラーノの広場~宮沢賢治童話集

5巻A面~7巻B面に収録。朗読は「セロ弾きのゴーシュ」に続き森本レオさん。原作は未読だったが、思いのほか本格的な小説という趣で、物語としてはこの朗読集で一番面白かったように思う。宮沢賢治特有の比喩表現も美しい。主人公自身が出来事を書き記したという体で、地の文もモノローグみたいなものだが、森本レオさんのキャラが主人公によく合っており、約3時間に及ぶ長編も途中で退屈になることなくとても楽しめた。余談ながら主人公の職業が羨ましい(笑)。

音楽はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「つめ草の明かり」「あのイーハトーヴォのすきとほった風」(ひと続きの2部構成の1曲として収録)。アルバムとほぼ同じアレンジと、前者は木琴系の音色がバックで流れる別アレンジ、後者はパンフルート系の音色で奏でられる別アレンジや、未収録のメロディーが含まれる口笛調の音色が用いられた変奏曲も。他にアルバム『姫神風土記』の「空と雲と友と」をシンフォニックにしたような穏やかな雰囲気の未収録曲が用いられており、この曲は短調の変奏曲も警察署での聴取の場面で流れる。さらに、チェロのような音色でアンビエント調の不穏な雰囲気の未収録曲が、毒蛾の舞う夜の町の場面で流れる。

「風の又三郎」(8巻A面44:38、B面37:06、9巻A面33:58、B面26:49)
風の又三郎~宮沢賢治童話集

8巻A面~9巻B面に収録。朗読は歌舞伎役者の五代目・坂東八十助(十代目・坂東三津五郎)さん。歌舞伎役者さんの朗読とは面白い趣向だ。地の文はハキハキとして聞き取りやすく、なまりの強いセリフも感情がこもってとても巧み。また標準語を話す学校の先生のキャラに特によく合った声音だ。かつて原作を読んだ時には退屈なストーリーだと思ったものだが、特にこの記事を書くにあたって聴き直した時なかなかに面白く感じて、あれっとなった。とても楽しめる朗読。

音楽はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「風のマント」「青いくるみ」。前者は少しキーが高いものやテンポが速いもの、またバックトラックが無いゆったりしたバージョンや、金属的な響きの音色に風のSEが入っている幻想的なアレンジも用いられ、アルバムにはない明るいメロディーに繋がるものもあってバリエーションが豊富。後者はアルバム同様のアレンジのほか、シンフォニックで柔らかな雰囲気のアレンジを聴くことができる。他に未収録曲が4曲。1つ目はパンフルート系の音色のハモりやシンフォニックな音色で奏でられる未収録曲があって、雰囲気はアルバム『姫神風土記』の「空と雲と友と」に通じるノスタルジックな感じ。2つ目は単調なシークエンスのバックトラックに白玉系の雄大なメロディーがのって、広々とした空を感じるような曲。3つ目はアンビエント調のゆったりした曲で、バックトラックに時々入る弦をはじくような音が印象的。4つ目もアンビエント調で雷雨(今でいうゲリラ豪雨)の場面で流れる、金属的な音色の不穏な雰囲気の曲。

「グスコーブドリの伝記」へ続く。

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先日入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』。今回はその内「セロ弾きのゴーシュ」の朗読と姫神による音楽について。

「セロ弾きのゴーシュ」(4巻A面24:59、B面21:27)
セロ弾きのゴーシュ~宮沢賢治童話集

4巻A面~B面に収録。朗読は森本レオさん。このカセットを聴く前に森本レオさんの声が宮沢賢治作品にハマっているのではと予想していたが、期待は裏切られず、大変良かった。感情の込め方が巧みで、聴いていて楽しい。作品世界の映像が浮かんで、一幕の劇を見ているような気分になる。キャラクターの声をかなり作っている部分もあるのだが、不自然さは無い。この朗読集で「なめとこ山の熊」と並ぶくらい好み。

好みの理由は他にもあって、それが姫神による音楽。この作品に使われている楽曲はアルバム『イーハトーヴォ日高見』には収録されていないが、かなり特徴的な曲ばかりで、姫神色は薄いものの良曲ぞろい。正直、「沼ばたけのオリザ」や「青いくるみ」を収録するよりこの作中の曲を入れた方が特色が際立った面白いアルバムになったのではとも思う。

まずはゴーシュが猫に「印度の虎狩り」をチェロで弾いて聴かせる場面。まさにその「印度の虎狩り」をイメージして作られたと思しき曲が流れる。ティンパニで始まり、チェロの音色が勇壮ながらもどこかユーモラスな旋律を力強く奏でる。

続いてカッコウにチェロを弾いてやる場面。3拍子のチェロの伴奏に、カッコウの鳴き声を模したパンフルート風の音色によるメロディーが載った曲。曲単独でも物語の情景が目に浮かぶようだ。その後カッコウが出て行った直後にシンフォニックなアレンジがなされたものも短い時間だが流れる。

3曲目は子ダヌキと一緒に「愉快な馬車屋」を演奏する場面。完全にジャズで、ジャズピアニストを目指していたという先代・星吉昭さんらしいといえるかも。主旋律のチェロ風の音色は弓で弦を弾くのではなく、弦を指ではじいて音を出したような感じ。それに子ダヌキがチェロを叩く音を表現したらしいリズムが入る。前曲と同じくシンフォニックなゆったりしたアレンジも流れる。

4曲目はチェロの中に子ネズミを入れて奏でるシーン。チェロの音色の独奏で始まり、途中からシンフォニックなシンセがバックに入る。主旋律をシンフォニックなシンセとベル風のシンセが奏でるアレンジも流れる。2曲目からこの曲までにいえることだが、章終盤で流れるのは別アレンジというよりも1つの曲の中の別々の部分かもしれない。

そして物語終盤、コンサートのアンコールでゴーシュが「印度の虎狩り」を演奏した後に家路につくシーン。あの「印度の虎狩り」を模した曲が流れ始めたと思ったら切れ目なく口笛風の音色がシンフォニックなシンセに乗って流れるパートに繋がり、おや?と思ったら一瞬ジャズ風の一節が入って、なんだなんだと思ったらパンフルート風の音色が「カッコウ」と奏でて終了。ここまでの楽曲をすべて詰め込んだような曲が流れる。ということは、もしかすると4部か5部構成くらいで全部の曲が実は1曲にまとまっているのかもしれず、全体像が非常に気になる。そういう意味でもぜひアルバムに入れてほしかった。

「ポラーノの広場」へ続く。