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先日入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』。今回はその内「セロ弾きのゴーシュ」の朗読と姫神による音楽について。

「セロ弾きのゴーシュ」(4巻A面24:59、B面21:27)
セロ弾きのゴーシュ~宮沢賢治童話集

4巻A面~B面に収録。朗読は森本レオさん。このカセットを聴く前に森本レオさんの声が宮沢賢治作品にハマっているのではと予想していたが、期待は裏切られず、大変良かった。感情の込め方が巧みで、聴いていて楽しい。作品世界の映像が浮かんで、一幕の劇を見ているような気分になる。キャラクターの声をかなり作っている部分もあるのだが、不自然さは無い。この朗読集で「なめとこ山の熊」と並ぶくらい好み。

好みの理由は他にもあって、それが姫神による音楽。この作品に使われている楽曲はアルバム『イーハトーヴォ日高見』には収録されていないが、かなり特徴的な曲ばかりで、姫神色は薄いものの良曲ぞろい。正直、「沼ばたけのオリザ」や「青いくるみ」を収録するよりこの作中の曲を入れた方が特色が際立った面白いアルバムになったのではとも思う。

まずはゴーシュが猫に「印度の虎狩り」をチェロで弾いて聴かせる場面。まさにその「印度の虎狩り」をイメージして作られたと思しき曲が流れる。ティンパニで始まり、チェロの音色が勇壮ながらもどこかユーモラスな旋律を力強く奏でる。

続いてカッコウにチェロを弾いてやる場面。3拍子のチェロの伴奏に、カッコウの鳴き声を模したパンフルート風の音色によるメロディーが載った曲。曲単独でも物語の情景が目に浮かぶようだ。その後カッコウが出て行った直後にシンフォニックなアレンジがなされたものも短い時間だが流れる。

3曲目は子ダヌキと一緒に「愉快な馬車屋」を演奏する場面。完全にジャズで、ジャズピアニストを目指していたという先代・星吉昭さんらしいといえるかも。主旋律のチェロ風の音色は弓で弦を弾くのではなく、弦を指ではじいて音を出したような感じ。それに子ダヌキがチェロを叩く音を表現したらしいリズムが入る。前曲と同じくシンフォニックなゆったりしたアレンジも流れる。

4曲目はチェロの中に子ネズミを入れて奏でるシーン。チェロの音色の独奏で始まり、途中からシンフォニックなシンセがバックに入る。主旋律をシンフォニックなシンセとベル風のシンセが奏でるアレンジも流れる。2曲目からこの曲までにいえることだが、章終盤で流れるのは別アレンジというよりも1つの曲の中の別々の部分かもしれない。

そして物語終盤、コンサートのアンコールでゴーシュが「印度の虎狩り」を演奏した後に家路につくシーン。あの「印度の虎狩り」を模した曲が流れ始めたと思ったら切れ目なく口笛風の音色がシンフォニックなシンセに乗って流れるパートに繋がり、おや?と思ったら一瞬ジャズ風の一節が入って、なんだなんだと思ったらパンフルート風の音色が「カッコウ」と奏でて終了。ここまでの楽曲をすべて詰め込んだような曲が流れる。ということは、もしかすると4部か5部構成くらいで全部の曲が実は1曲にまとまっているのかもしれず、全体像が非常に気になる。そういう意味でもぜひアルバムに入れてほしかった。

「ポラーノの広場」へ続く。

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先日入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』。今回はその内「貝の火」と「北守将軍と三人兄弟の医者」の朗読と姫神による音楽について。

「貝の火」(2巻A面31:52、B面29:04)
貝の火~宮沢賢治童話集

2巻A面~B面に収録。朗読は「雪渡り」と同じ根岸季衣さんだが、こちらの方が作品によく合っていたように思う。特にずるがしこい狐の声はバッチリで、子供が喜びそう。
それにしても、一度読んだことがある作品だが、こんなにホラーな話だったかとびっくり。「悪い行いをすると光がかげるという石、貝の火→ホモイ(子ウサギ)が驕りから悪行→なぜか貝の火がますます美しく輝く」の繰り返しにより、ウサギ一家の道徳観がひっそりとぶれていくのが恐ろしい。盗んできたパンなんぞ食わないと言っていた父親ウサギが普通にパンを食べるようになる。もっとも最後には貝の火は一気に濁って砕け、そして飛び去り、ホモイは失明してツケを払わされるのだが(フクロウのセリフ「たった6日だったな」も怖い)。余談ながら、解説書の「ホモイの失明は罰として重すぎる」というような見解には違和感。

音楽はアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「つり鐘草は朝の鐘を高く鳴らし」がメイン。アルバムと比較して少しアップテンポだったり、音数が多く豪華だったりする。その他、アルバム未収録のアンビエントで貝の火の輝きを現したらしい、キラキラした、ミステリアスな雰囲気の曲(というよりSEに近い)が、貝の火が登場するたびに流れる。

「北守将軍と三人兄弟の医者」(3巻A面32:33、B面16:19)
北守将軍と三人兄弟の医者~宮沢賢治童話集

3巻A面~B面に収録。朗読は「なめとこ山の熊」と同じ常田富士男さん。この作品の朗読も良い。特に将軍が号令をかける場面などはハマっている。ただ、なにぶん「なめとこ山の熊」が素晴らしすぎた。
未読の作品。人を診る医者、家畜を診る医者、植物を診る医者の三人兄弟の医者元へ、長い砂漠駐留であちこちにガタが来た将軍が順に訪れて治療されるという物語。将軍の尊大さや医者の泰然とした雰囲気、そして治療方法がユーモラスさを醸しているが、最後の物語のまとめ方に意外性があって、単純な童話になっていない。

音楽は『イーハトーヴォ日高見』収録「三十年という黄色な昔」がメイン。正直、あまり好みの曲ではなかったのだが、物語の内容を知って、また朗読に使われているのを聴くと実にマッチしていて良い。2章冒頭から流れる、鼓笛隊を思わせる高い笛の音が即興的な主旋律を奏でる曲はアルバム未収録だが、バックで「三十年~」と同じユーモラスな低いホルン(?)の音色が流れ、そして切れ目なく「三十年~」に繋がることから、アルバム収録に際してカットされたプロローグ的なパートのようだ。その他、同じくホルンの音色に乗って流れるファンファーレのような曲もあるが、これもカットされたパートだろうか。また、3章や4章でもパンフルート風の音色などで奏でられるユーモラスというか無邪気な雰囲気の曲が流れるが、こちらは独立した未収録曲のようだ。

「セロ弾きのゴーシュ」へ続く。

先日入手した朗読カセット『宮沢賢治童話集』。今回はその内「雪渡り」と「なめとこ山の熊」の2話の朗読と姫神による音楽について。

「雪渡り」(32:08 ※カセットのラベル記載の収録時間。実際には10~30秒ほど短い。以下同じ。)
雪渡り~宮沢賢治童話集
全14巻のカセットの内の1巻A面に収録されている。まだ読んだことがない童話だったが、宮沢賢治にしてはシンプルな、あまり深みが無いお話という印象。朗読は根岸季衣さん。好みの問題かもしれないが、子供や狐たちのセリフ部分でちょっと声を作り過ぎというかわざとらしい感じがする。特にはやし言葉(童歌)の部分は元気が良すぎて少し耳障りに感じたが、朗読の聴き手が子供達ならむしろ受けが良いのかもしれない。通常の文章部分は落ち着いた雰囲気で良い。

音楽の方は姫神のアルバム『イーハトーヴォ日高見』収録「堅雪かんこ しみ雪しんこ」(アルバム収録に際して少しアレンジが変えられている。朗読の最後に流れるものは主旋律が笛の音色でコブシがしっかり入っていて、姫神ファン的にはむしろこのアレンジで収録してほしかった(笑))の他、アルバム未収録曲が2曲。8:55頃などで流れる笛のようなシンセのハーモニーによる白玉系の寒々しい雰囲気のアンビエント(朗読の終わりではこの曲から「堅雪かんこ~」に切れ目なくつながるので、もしかするとアルバム収録に際して削られたパートかもしれない)と、17:38頃流れる、その部分の文章“お月様は空に高くのぼり、森は青白い煙に包まれています”をイメージしたと思しき曲(クリスタル系の音色のシンプルな曲)。いずれも曲単独で聴くと印象が薄く、アルバム未収録はしかたないかなという感想。

「なめとこ山の熊」(39:46)
なめとこ山の熊~宮沢賢治童話集
1巻B面に収録。『まんが日本昔ばなし』でおなじみの常田富士男さんによる朗読。これが控えめに言って素晴らしかった。主人公がお爺さんということもマッチしている要因の1つではあろうが、物語全体に漂う哀しみや不条理、諦観、そういったものに独特の枯れた声音が絶妙に合っていた。前作と同じくまだ読んだことがなかったが、胸が締め付けられるような、グッとくるものがあり、特にこの猟師のお爺さんと熊のやりとりなどは堪らない。童話というには重く、子供には少し難しいのではとも思えるが、1度聴いただけで魅了されてしまった。宮沢賢治作品ではワタクシ的№1に挙げたい。たぶん本棚のどこかに原作があるはずなので、探して読んでみよう。

音楽は『イーハトーヴォ日高見』収録「大空の滝」「くろもじの木の匂い」「雪は青白く明るく水は燐光をあげ」。アルバムではひと続きの1曲として収録されているが、朗読内では別々に、それぞれ曲名になっている言葉が登場するタイミングで流れる(「大空の滝」は「大空滝」というフレーズが出てから1分ほど後)。アレンジは少し異なるが、音色の構成はほぼ同じ。ただ、24:17頃などで流れる曲は「くろもじの木の匂い」の変奏曲で、アルバムより1オクターブ低い木琴のような音色で主旋律が奏でられている。また、31:50頃流れる曲は「大空の滝」のクラリネットの音色が奏でる部分に似ているもののメロディーが異なる。

「貝の火」へつづく